なぜ感動にこだわるのか?

あなたが この仕事を選んだ理由はなんですか?

僕は北海道の札幌市で育ちました。
父は東京の誰も知っているような大手企業でトップセールスマンとして活躍していて、人の心を掴むのが非常に上手な人でした。

優しく穏やかな口調で、誰とでも自然に信頼関係を築いていくような人です。
一方で母は、人の気持ちにまっすぐ向き合う、とても愛情深い人です。

たとえば父は、成績が出せずに苦しんでいた部下を信じてチャンスを与え続けた結果、その部下が「この人の元だからこそ辞めずにいられた」と言っていたそうです。
母が嬉しそうに僕にその話をしてくれたことを、今でも覚えています。

また、週末にかかってくる個人宅向けの営業電話にも、父は営業の熱意を感じた相手には「あなたの営業、素晴らしいですね」と伝えていて、その一言で相手の空気が変わる。最終的に電話の相手が父のファンになってしまう。そんな人でした。

母は、僕が小学生のときにいじめにあっていたとき、詳しいことは何も知らなかったと思いますが、なにかを察したのでしょう。こう言いました。
「お母さんは、あなたのためなら命を捨てられるよ。」
このたった一言で、いじめてくる相手のことなどどうでもよくなりました。僕はそれまでの不安や恐れから解放されたんです。

大学でひとり暮らしを始めるときには、母から手紙が届きました。
そこには「応援してるよ、しっかりね」という、これからは見守ることと子離れの決意が書かれていて、その時、僕は初めて「大人としてちゃんと生きよう」と思えました。

感動を起点にしたこの循環をつくることができれば、売上だけでなく、企業の存在意義そのものが社会に伝わっていきます。僕はこの考え方を、父と母から教わり、物語の仕事で磨き、いまはマーケティングの手法として活かしています。

ですので、「なぜこの仕事をしているのか?」と聞かれたら、原点にあった“あの頃の両親の姿”があったからです。

だから僕は、どんな仕事でも「心を動かす」ことにこだわります。
なぜなら「感動は、人生もビジネスも前に進める力がある」。その確信があるからです。
それが、この仕事をしている理由です。